観光統計から見る日本人の平均旅行回数について

日本人は年に何回、旅行をするのか

先日、とある会で「日本人は年に何回、旅行をするのか」という話題に触れましたので
その際に調べた諸々をご紹介します。
まず簡単にググった範囲であれば、公益財団法人日本交通公社「第I編 日本人の旅行市場」から
下記のような内容を確認できます。

●旅行平均回数
16年の日本人の旅行平均回数については、
国内宿泊旅行全体では2.56回/人、
国内日帰り旅行全体では2.48回/人、
海外旅行全体では0.13回/人であった。

ただ、結果が2016年とコロナ前で古く、欲を言えば
年齢別も知りたいので、再度「年間 旅行 頻度 年齢別」と検索。
すると今度はじゃらんの「じゃらん観光国内宿泊旅行調査 2024【旅行市場動向編】」という資料を確認。
表を引用しますが、怒られたら消します。

 2023年度の1年間に国内宿泊旅行(※1)を実施した18~79歳の割合は49.5%。
 実施者における年間平均旅行回数は2.80回、1回の旅行当たりの平均宿泊数は1.74泊であった。
 実宿泊旅行者数の推計値は4670万人、延べ宿泊旅行者数(※2)は1億3060万人回、延べ宿泊数(※3)は2億2739万人泊となった。
 性・年代別に見ると、宿泊旅行実施率は18~29歳女性で最も高く63.6%、次いで30代女性が57.1%、18~29歳男性が55.7%と、若年層で実施率が高い傾向。
 一方、宿泊旅行実施者における年間平均旅行回数は60代男性が最も多く3.23回、次いで18~29歳男性が3.19回。
 延べ宿泊旅行者数で見ると18~29歳男女が1300万人回を超えボリュームゾーンとなっているが、延べ宿泊数で見ると、18~29歳男女に加え、平均宿泊数の多い60代男性、70代男性も2000万人泊を超える。

データの母数はマクロミルの登録モニター70万件ほどから「旅行を実施した」 4.5万人ほどを対象、回収数約1.5万人と量的には十分な信頼性のある情報です(しかも執筆時点直近)。
ただ、旅行実施者となると命題とした「日本人」全体とはいえない。
さすがに「年間 旅行 頻度 旅行していない人を含む」と検索しても都合の良いデータが見つからなかったため、別のアプローチを考えました(以下が今回の主題です)。


社会生活基本調査からどうにか抜き出せないか。

ということで、納得のいく数値を抜き出すべく、令和3(2021)年「社会生活基本調査」の統計データを使ってみます。
使い慣れない方にちょっとだけ説明。

▶社会生活基本調査とは?
令和3(2021)年10月20日に実施、 10月16日から10月24日までの9日間のうちから、調査区ごとに指定された連続する2日間について
「何をしたか」を15分刻みで聴取、サンプル数は16万件程度。
目的は「生活時間の配分や余暇時間における主な活動の状況」などを把握し、国民の社会生活の実態を明らかにするため。

調査は、昭和51年以来5年ごとに行われており、令和3年調査はその10回目と歴史ある調査です。
今回は「男女,配偶関係,ふだんの就業状態,ふだんの健康状態,頻度,年齢,旅行・行楽の種類別行動者数(15歳以上)-全国」の行動者数、行動率をダウンロードして整理します。
ダウンロードすると下記のような表が閲覧できます。

今回は性別、配偶関係、健康状態は考慮せず年齢を中心に整理します。また個人的に「有業者」「無業者」の比較も興味があったので併せて対象としました。
また、旅行回数については加重平均を掛けるため、下記表のような数量化をしました。

分類回数
1_年に1回1
2_年に2回2
3_年に3回3
4_年に4回4
5_年に5回5
6_年に6~7回6.5
7_年に8~9回8.5
8_年に10回以上10

加重平均については、別記事がありますので参考ください。
紹介した記事のような加重平均を掛ける手順を参考にすると、例えば「有業者且つ20~24歳」における日帰りの頻度は下記のように計算できます。

頻度頻度
(加点)
行楽(日帰り)
(比率)
回数
(加点×比率)
0_年に0回043.6%0.00
1_年に1回16.9%0.07
2_年に2回26.7%0.13
3_年に3回38.8%0.26
4_年に4回43.4%0.14
5_年に5回57.3%0.37
6_年に6~7回6.53.2%0.21
7_年に8~9回8.51.4%0.12
8_年に10回以上1018.7%1.87
旅行に行く人口比率合計 56.4% 
推計回数  3.2

1セグメントでもそれなりに計算の手間がありますが、ひとまず「有業者且つ20~24歳」であれば、「3.2」回という推計値を得ることができました。


加重平均による旅行回数の推計

上表と同様の処理を一通りのセグメントへ行った結果が下記表です。

こちらでは1泊2日以上の旅行は全体で「1.0回」と、じゃらんの結果である「旅行実施者における年間平均宿泊旅行回数2.80回」を大きく下回りました。
ただ、旅行実施者が全体の49.5%ということから加重平均の考え方を応用すると
【49.5%×2.80回⇒1.39回】と、大きく異なることはない、といった心象です。
(それでも国民1.2億人でかけ合わせると大きな誤差にはなるのですが)

まとめ

登場した諸情報を再掲します。

こうしてみると、コロナ禍前とコロナ禍以降の違いが顕著である、という心象です。
また、日帰り旅行の回数は、調査に回答した人の「主観」が混ざることが考えられます。
例えば他県の道の駅へ買い物に行ったことを「日帰り旅行」と捉える人も「買い物」と捉える人もいるだろう、という点です。
宿泊旅行については「宿泊」というアクションが伴うため、
日帰り旅行と比べれば主観によるばらつきが少ないかもしれません。

昨今は統計データを自由に扱えるようになり、こういった興味本位な分析も気ままに行えるようになりました。
また調べてみたいテーマが出てきたらご紹介します。